- ●現代的ニーズに応える人文社会科学の知の発信のために
本専攻は、これまで、日本および国際社会の歴史と文化、地域の自然と生活などの諸分野を対象にして、各専門領域の知識を深め学際的に諸問題を探求する能力を養成してきました。この観点から見て、研究組織として、また研究者養成のステップとして、大きな成果を挙げてきたと自負しています。
しかし、現代社会は、ますます高度に情報化・知識化しています。広く深い知識を的確にマネジメントする能力は、高度な知を探求する専門職としての研究職にだけでなく、それを広く社会に向けて発信するさまざまな高度専門職にも、共通して求められていることだと言えるでしょう。私たちは、知識を扱うさまざまな実践的能力が社会的に要請されている現状を踏まえ、研究で培った高度な知識を基礎に、社会に向けて奈良地域に蓄積された歴史的な文化資産を掘り起こして発信し、また伝統を踏まえた新たな文化的胎動を紹介するなど、奈良地域における新しい文化創造の運動の一翼を担いたいと考えています。
この課題を実行するために、私たちは、「女性の職業的能力を開発する実践的プログラム」というテーマで大学院教育改革支援プログラムに採択された本学の事業に参加いたしました。この事業のなかで、一方で広く社会に発信・紹介すべき内容を新たな視点で掘り起こし、社会的ニーズに応える制作物や表現作品を作り上げる(実践応用科目群)とともに、他方でその作品を高度な技術で社会に向けて発信する(実戦基礎科目群)能力をもつ女性を養成したいと考えています。
本学が知的な意欲と能力を兼ね備え、高い企画提案能力をもつ女性を輩出してきたことは、こんにち社会のさまざまな部門で本学卒業生が活躍していることで明らかです。私たちは、この成果を基礎に、さらに実践的能力に磨きをかけた大学院修了生を社会に送り出し、この社会の文化的成熟と発展にいっそう寄与してゆきたいと考えています。
- ●展開される授業の一例
このプログラムを具体的に展開するにあたって、各授業は、本専攻の専門的研究の蓄積を活かすとともに、実際的な技法を習得することを念頭に構想されています。たとえばフィールドワークの実践や実験的方法の企画・実施を通して、学生のチャレンジを促すとともに、研究から発信までを具体化する過程を体験させます。この課題を本専攻の各コースが専門を超えた学際的協力を通して遂行することで、学生の総合的な能力をいっそう効果的に養成できると考えています。
たとえば、古代文化地域学および比較歴史社会学コースは、文化史総合演習およびWeb情報実習という、関連する二科目を開設します。前者においては、中学・高校教科書の文化史に関連する記述を比較対象し、AV資料なども援用しながら、生徒により理解しやすく興味の持てる文化記述のありかたを探求します。後者の授業では、その成果を具体的な教育の現場に反映するための方法の一つとしてインターネットを取り上げ、効果的に発信する方法を開発し、学びます。どのコースの学生も受講でき、最新の規格に即したオリジナルHPを作成・運営するスキルを修得できるでしょう。
地域の文化や生活に関心をもつ学生のためには、地域文化資源コンテンツ制作実習A・Bを用意します。たとえば、国指定の無形民俗文化財である奈良の若宮おん祭りの調査を行い、取材と記録撮影を実際に行った後、各種の記録データーをコンピューター上で編集して、マルチメディアに対応した映像コンテンツを製作するという一連の過程を体験してもらいます。同様に地域環境調査法では、実際に地域のフィールドワークを行うことで、地域の環境と生活に関する理論的な関心を踏まえた調査の方法を学びます。
さらに社会情報学コースでは、本プログラムで導入された「実践スキルゼミナール」科目として、「エスノメソドロジー・ワークショップ」や「社会調査」、「質的調査基礎」などにより調査スキルを学習・修得して、現代社会への問題意識を研究や実践の課題として展開する際の実証的基盤を確保する方法を身に付けます。
これらの科目の展開によって、本専攻のサハケレアネキヨヘ_タコヌアネキヨヨアイ・-。セ|フ衲|モホマキ。ソのカリキュラムはいっそう充実すると考えていますが、さらに学生や地域・社会からのフィードバックを随時反映して、今後も拡充する予定です。
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