「奈良女子大学 臨床心理相談センター」が、2013年5月12日に開設される運びとなりましたことを、まずもってご報告させていただきます。
本学の前身である「奈良女子高等師範学校」が開校されたのは、明治41年3月31日のことでした。それについて、現在の今岡学長は「1907年(明治40年)の帝国会議で、第二女子高等師範学校を関西のどこに置くかの議案についての投票結果は、京都と奈良で131対131の同数で、議長裁決で奈良に決まりました。東京女高師は都会で首都に置かれたのですが、奈良女高師は古都に置かれたのです。とても運命的な役割を感じます。」と就任の挨拶の中でひときわ強い感慨を込めて記しておられますが、その歴史と伝統のある本学にこのたび「臨床心理相談センター」が誕生することになったことに、スタッフ一同、何とも名状しがたい運命的な役割を感じて、身の引き締まる思いを致しております。
と言いますのは、世の中に心の時代が到来したころ、この国の大学に同様のセンターが次々と設置されてきた経緯の中で、本学においては幾度となく計画だけは持ち上がるものの、どういうわけか機は熟することなく立ち消えになってしまう状況が続いておりました。それがこのたび、関係各位が相当な営為を結集した結果、難産ではありましたが、ようやく誕生する日がやってきたからです。
当センターは、地域社会への貢献を念頭に、幼児期から児童・青年期を経て老年期に至るまでの、この時代の人々が抱える心の諸問題に対して、可能な限り様々な臨床心理学的援助を行ってまいる所存です。周知のように、臨床心理学は応用科学の一つでありますが、諸科学の中では最も若い学問です。基礎心理学(実験心理学、認知心理学、生理心理学など)をはじめ、隣接する医学(精神医学、精神病理学、心身医学、精神薬理学など)で得られた知見を取り入れるだけでなく、他分野(哲学、人類学、社会学、言語文化学、歴史学、文学など)からも多くを学びつつ、人々の健康と福祉に役立つことを目的とした学際的分野の学問として位置づけられております。
そこで、当センターは生活環境学部に新設される予定の「心身健康学専攻・臨床心理学コース」の教員(臨床心理士有資格者)が中心となって、この分野における有用な臨床心理士を育てると同時に、地域社会の心の健康に寄与することを目的として、スタッフ一同、力を尽くしてまいりたいと考えておりますゆえ、今後とも学内の関係各位はもとよりですが、学外の関係機関並びに関係者からもより一層のご指導ご鞭撻をお願い申し上げる次第です。
真栄城輝明(臨床心理相談センター 前センター長)
2013年4月14日記
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