T『雍州府志』(貞享元年(1684) 黒川道祐) 巻6 「土産門 上 饅頭」
「…形状片團是稱奈良饅頭是本朝饅頭之始也(中略)
凡饅頭并餅納砂糖并赤小豆粉於其内蒸而食之其所包□之物如杏之仁故稱杏…」
【…形状片團是奈良饅頭と称す。是本朝饅頭の始めなり…凡そ饅頭并餅、砂糖并小豆粉をその内に納め、蒸して之を食す。其れ包む所の物杏の仁の如し。故に杏と称す…】
U『和漢三才図会』(正徳2年(1713) 寺島良安) 巻第105
「…今造法用醴酒溲麪?餡盛焙籠煖則肥脹再蒸之成…」
【…今造る法、醴酒[あまさけ]を用ひて麪[むぎのこ]を溲ねる。餡をつつみて焙籠に盛り、煖れば則ち肥脹る。再び之を蒸して成る】
V『守貞謾稿』(嘉永6年(1853) 喜田川守貞) 巻1 食類
「…昔は諸国ともに菜饅頭廃し、その後は塩饅頭と云ひて小豆餡に塩を加へたり。小豆も皮を去らざるもの多し。今も江戸の江戸橋等にこれを売る店あり。鄙人これを食すのみ。近世は鄙といへども皆専ら砂糖饅頭なり。文化以来やうやうかくのごとくなり。
(中略)また異名に十字といふことあり。図のごとくきりめを入れ食す故なり。…」
史料から類推した饅頭↓
形状 | 片団 | 半球形 |
中身 | 小豆餡 | 漉し餡(または粒あん)を塩で味付けか |
皮 | 小麦粉 | 『和漢三才図会』の記述から甘酒を加えたか |
※『守貞謾稿』巻之一 羊羹 の段に「もし砂糖を用いざるものには甘葛を用ふ」とある。江戸時代には、古代そのままの甘葛(あまづら)は存在しなかったので、他の甘味料を「甘葛」と称したものと考えられる。
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材料
【餡】 小豆250g・塩
【皮】 各条件いずれも発酵時間約2時間で行いました
- @ 中力粉100g・甘酒(室温 約20℃)105cc
- A 強力粉100g・甘酒(室温 約20℃)105cc
- B 中力粉100g・甘酒(42℃)105cc
- C 強力粉100g・甘酒(42℃)105cc
- D 中力粉100g・ぬるま湯(42℃)105cc
- E 強力粉100g・ぬるま湯(42℃)105cc
作り方
【餡】⇒現在の一般的な漉し餡の作り方と同様です。今回は味付けに砂糖を用いず、塩で味を付けました
【皮】
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1 粉をふるい、粉に甘酒またはぬるま湯105ccを加えて
よく捏ねる(10分〜15分程度) |
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2 耳たぶの固さを目安にまとめ、暖かい場所でねかせる
(2時間程度) |
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3 生地がひとまわり大きくなったら皮を25gごと・
餡を15gごとに分ける
(皮が薄い方が美味しく仕上がることが判明したため、
途中から餡を20〜25gにした)
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4 蒸し器に入れ、強火で約10分蒸す |
生地の様子
発酵後の生地の様子です。
甘酒入りは水入りのものより生地が黄色く、水(42℃)のものは柔らかく仕上がりました。

右:D中力・水(42℃)
左:E強力・水(42℃)
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右:B中力・甘酒(42℃)
左:C強力・甘酒(42℃)
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右:@中力・甘酒(20℃)
左:A強力・甘酒(20℃)
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完成!!!
完成した饅頭です。
温かい方が皮がやわらかく、美味しいです。
余談ですが……余った皮でピザなどを作ると良いです。

@中力粉・甘酒(20℃)
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A強力粉・甘酒(20℃)
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B中力粉・甘酒(42℃)
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C強力粉・甘酒(42℃)
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D中力粉・水(42℃)
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E強力粉・水(42℃)
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考察
- 甘酒を加えると漉し餡の塩味と相まって、DEのものよりはっきりと甘さが感じられます。
- 強力粉を使用すると、中力粉使用のものに比べて弾力性が強くもっちりした生地になりました。
- 生地の段階では、DEのぬるま湯使用生地が最も柔らかかったのですが、蒸すと@ABCの甘酒使用生地より固い仕上がりになりました。
- 甘酒の温度は仕上がりにそれほど影響しないように感じられましたが、温度を上げたBCの方が若干発酵が進み、皮がより柔らかくなるように思えました。
- 冷めると皮が非常に硬くなります。一日経過したものでも温め直すと皮が柔らかくなります。
⇒皮はB中力粉・甘酒(42℃)が弾力性・柔らかさの面で良い仕上がりでした。
餡を皮に包む際になるべく薄く伸ばし、厚い部分が無いように気を付けると良いと思います。
(皮は、蒸した際に中の餡が透けるほど薄くした方が美味しいです)